稲妻 1952年 日本大映
あらすじ
「林芙美子の同名小説を、田中澄江が脚色した成瀬巳喜男=高峰秀子コンビの名作。4人の子供の父親がみな違うという複雑な母子家庭で、母と異父兄姉たちの醜さに愛想をつかした末娘が、家を出て自立する過程を物語の骨子としている。作者はすべての登場人物を肯定も否定もせずありのままに描いており、俳優たちの好演も相まって、類型に属さない生身の人間の存在感が鮮烈に迫ってくる。バスガイドとして働くヒロインを映した冒頭シーンでの車窓からのぞく風景をはじめ、東京という都市の息づかいを捉えている点でも出色で、娘の実家のある下町と新居の世田谷とは見事に描き分けられている。」映画ナタリー
○所感
この映画ほど複雑な人間関係の映画を見たことが無い。昔の映画鑑賞はこうした人間関係を予習して望んだのだろうか。確かに設定が凄い。4人の浦辺粂子の子供は全員成人しており、全員、父親が違い、全員が子供が居ない?と言う設定。まあ戦争でこうゆう人も居たんだろう。頭に引っかかるところがない。前知識があっても苦労しそうだ。何の痴話喧嘩か全く分からない。主演の高峰秀子は、白いシャツが清楚で素晴らしいのだが、画面も全体に白く、清々しいのだが、「稲妻」?とは?稲妻に辿りつかない。申し訳ないがトマトだ。
○監督:成瀬巳喜男
○原作:林芙美子
○出演
人間関係を整理してみました。
間違っていたらごめん。
ネタバレとかそういう問題ではない。
○主人公:
小森清子 - 高峰秀子
清く正しく、非の打ち所がない女性。バスガイドである。ここからは良かった。勿論主人公であるのだから、チョクチョクと出て来るのだが、怒っている。ただひたすら。
○主人公の母:
おせい - 浦辺粂子
問題の根本は彼女の子供4人が全て違う父親だということ。
最後の主人公の父親すら居ない事。死別?
○主人公の長姉:
縫子 - 村田知栄子
飲み屋の女将さん風情。
この人の旦那は、完全に彼女に嘗められており、妹の清子の縁談にと連れて来た綱吉(将軍みたいな名前だが、ツナキチと呼ぶ。)に懸想している。
○主人公の長姉の夫:
龍三 - 植村謙二郎
その存在感のなさ。何の重しにもならない男性。
○主人公の次姉:
屋代光子 - 三浦光子
着物の似合う美人。慎ましやかで、汚れのない人。
彼女の夫が急逝した事により、ドラマは主人公より、彼女の不幸が中心となっていく。しかも、その急逝した旦那には田上りつと言う愛人が居たと言う。この愛人に対しても、彼女の神対応。
旦那の保険金があるため、それを中心に家族は乱れて行く。
○主人公の次姉の夫
呂平-急逝する。(顔は一度も見せない。)
○主人公の長兄:嘉助
酒飲み。問題の綱吉もそうであるが、全体的に登場する男は酒飲みで、顔が似ている。これがまた混乱の元。
ここから先は、家族外。
○綱吉 - 小沢栄
商売人、温泉旅館をしている。長姉は清子にこの人との縁談を持ち込む。が、実は、長姉自体がこの男と親しい。この男はややこしい人で、結局一度も正式な縁を持たず、長姉、次姉と親しくなり、本来縁談を世話された清子に家を出る決断をさせる。ややこしい役の割に、他の男性と区別し難いため、益々ややこしい。この人と、長姉の2人はトラブルメーカーだ。
○田上りつ - 中北千枝子
次姉の急逝した旦那の隠し妻。生まれたばかりの赤ん坊がいる。突然、次姉の前に現れ、保険金を分けて欲しいと要求する。
○国宗つぼみ - 香川京子
この様な絶望的家庭事情により、主人公は絶望し、(杉山とめ - 滝花久子)の家に下宿して家を出る事にする。その家の隣に住む親に先立たれたこの兄妹の清らかな事。この人は、妹。美しい!
○国宗周三 - 根上淳
そしてその兄。何となく、主人公の好きなタイプである。
○総括
登場人物の整理に2時間を取られた。
もし、これから見られるのならお使い下さい。僕はもういい。
原作の林芙美子の小説と言えば「太郎物語」を読んだ。登場人物が多かった作品だ。というか、本の良いところは、この人誰だっけ?と見直しできる事で、映画の限りある時間の中では難しい。多分、小説では成り立っているに、違いない。成瀬監督は林芙美子作品を沢山映画にしているようだから、他の作品もこれだろうか?
合掌