○朝倉健一 - 堤真一
この俳優は、現代の日本の映画界を代表する俳優である。俳優は監督の力量次第であるから、不運な時も多い。特にこの人はそうだ。
この映画は、劇中アンソロジーのような作りになっており、彼はその中において、無口で、愛想の無いホストを演じている。ただ彼自体が抱えている問題があり、それを映画は輪廻転生の下で解決に導く。1代前と、数代前の転生が、現在の子孫と一緒にいる姿は実にみずみずしく新鮮だ。
○坂井スミレ - 柴咲コウ
彼女は、実に美しい。朝倉は奥手でありながらスミレに懸想している。目の上に、鼻の左右の頬から走る線、そして長く細い目、演技は非常に抑え気味で、登場シーンは少ないのだが、存在感に脱帽だ。
○あるところで起きた銀行強盗に朝倉は巻き込まれ、犯人3人に乗っ取られる。犯人はもう一人いるのだが、彼は仲間を裏切り逃げてしまう。この3人は、その失意のどん底にいる。そして、それぞれの新しい人生を見つけ、去っていく。
①お坊さん 新井定運 - 寺島進
銀行強盗を画策しながら、実は坊さんだったと言う設定。全てに渡ってそうだが、エネルギーは高いが、よく抑えられている。輪廻転生を唱え、パンクバンドだか、ヘビメタバンクだかわからないが、と、去っていく。松雪泰子（特別出演）がこれまた実に落ち着いた演技をする。
②野球選手 児島誠 - 安藤政信
最も若い彼は、逃走中の信号待ちの中で原付の彼女に捕まる。そのまま、車の後席でセックスを始めるなど、めちゃくちゃなのだが、セックスの後バッティングセンターに行き、(何故かセックスの後は、セックス以外の運動に心が向くらしい)そこで、野球選手に
スカウトされる。
○これを全部説明するとネタバレになるので辞めるが、
西五郎 - 大杉漣にせよ、自分の世界へ、去っていく。
誰だか知らないが、1番最初に首にナイフを刺された、悪仲間も面白い。
一人いい思いをしたかに見える裏切り者の津田寛治であるが、彼が朝倉の輪廻転生に絡んでくるから面白い。
○この映画はSF？
一晩、睡眠薬を飲まずによく考えてみると、この映画はSFだったのだ。もうこの呼び方は、古いかも知れない。が、時空と法と、輪廻転生を超えたSFだ。やっとこの映画の褒め方が分かった。であるから、この映画の訴えんとしているところを考える必要が無かった。と言うことか？
○気になること
久々に感動した日本映画だが、一点気になる事がある。
銀行強盗の友人だ。銀行強盗3人組は、朝倉の車に乗ってから空腹を訴え洋食屋に行く。(何料理か不明、或いは失念)この時、彼らの友人が現れ、3人の銀行強盗に難癖を付けてくる。曰く、銀行強盗をしたらしいな云々、秘密にして貰いたかったら俺にも分け前くれ云々。すると、洋食屋の外にパトカーの影が
。彼らは取っ組み合いになり、洋食屋のナイフ
を友人の首の横側面に立ててしまう。友人は倒れ、七転八倒する。このシーン。あの高さから見て2〜3CMほど肉にめり込んだのでは？のこのシーン。血すら出ていない。
5年ほど前に、僕は自殺した事があり失敗した。真夜中に、その時住んでいた家の3階の一室のバスルームに閉じこもり、ホームセンターから買ってきた彫刻等を使い自殺に及んだ。2回、３回と首に立てたところ、首から血が吹き出し、血はアッと言う間にバスルームを満たした。これで終わったと思い、そこに胡座をかき、死を待った。ところが、あれだけの血が出たにもかかわらず、意識はハッキリとして、いつしか血も止まり、いつしか小鳥の囀りを迎え、タクシーで現れた華に発見された。流石に立ち上がった時クラクラし、階段を転げ落ちたが、自殺は未遂に終わった。階段を転げた時、彼女は逃げ出し、その立ち位置を明確にした。
これがあったので、このシーン。違和感が拭えない。ナイフを抜いてないからかな？どうでもいいけど。
日本ヘラルド
