終着駅 1953年 イタリアアメリカ
あらすじ
「米国人の若い人妻メアリー・フォーブスは、断ち切りがたい想いを残してローマの中央駅にやって来た。
彼女は妹の家に身を寄せて、数日間ローマ見物をしたのだが、その間に1人の青年と知り合い、烈しく愛し合うようになってしまった。
青年はジョヴァンニ・ドナーティという米伊混血の英語教師で、彼の激しい情熱に、メアリーは米国に残してきた夫や娘のことを忘れてしまうほどだったが、やはり帰国する以外になすすべもなかった。
妹に電話で荷物を持って来るよう頼み、午後7時に出発するミラノ行の列車にメアリーは席をとった。
発車数分前、ジョヴァンニが駆けつけた。彼はメアリーの妹から出発のことを聞いたのだ。
彼の熱心なひきとめにあって、メアリーの心は動揺した。」Wiki
○所感
この映画の素晴らしさは、主演女優の- ジェニファー・ジョーンズである。何が凄いかと言うとこの人の眉だ。左右の眉毛が違う事は、当たり前として、このローマ駅と言う時間的に限られた空間で、行くか行かぬか、信じるか信じないか、イタリアかアメリカか、と言う決断に揺れる女性を見事に演じている。彼女の眉は、その演技の見事な小道具であり、恰も眉が演じているようかである。そして、白黒の陰影の中で眉が徐々に暗くなって行く。何だ?これは?
美人って一体なんなのだ?美人って、彼女の為に彼女は美人に生まれたのではない。それは、花や、雲や、月の様に、神様が作られて、人に見てもらいたいが為にこの世に出たに違いない。この女優を見ていると、その想いが胸を築き上げた。そして眉とゆう器官は何なのかを調べた。
「眉毛は機能的には額から落ちる雨水や汗が目に入らないようにする役割を担う。それぞれの毛の方向はそれに対応するものと考えられる。同様に、雨水やほこりや小さなゴミが目にはいるのを避ける役割も担っている。他方で、眉は人の表情を作る重要な役割を担っており、それによるコミュニケーションにおいても重要な役割を果たしている。」Wiki
- 眉間(みけん)…左右の眉と眉の間
- 眉頭(まゆがしら)…眉の内側の部位
- 眉山(まゆやま)…弓状の眉の屈折部
- 眉尻(まゆじり)…眉の外側の部位
眉の部位で言うと、「眉山(まゆやま)…弓状の眉の屈折部」だ。ここから、「眉尻(まゆじり)…眉の外側の部位」に流れる部分。この映画は、ここに注目して見てても十分鑑賞出来る映画である。またこうした、欧米女性に対し、京マチ子のような日本の女優を比べても面白い。その視点で見ると、恐ろしく表現が違う。「描いたんだから」いやいやそんな単純な。肉として陰影を作る眉を言っている。
○監督 ヴィットリオ・デ・シーカ
○出演
○メアリー・フォーブス - ジェニファー・ジョーンズ:
アメリカ人の人妻。
ローマの駅は、今の大都市の空港みたいだ。整然と柱に打たれたタイルが美しい。そこを1人、誰か約束していない人を待っているような、それでいて、恐ろしくなって早く列車に乗りたいような、一際背の高いアメリカ女性。それが彼女である。異国の男性と限られた時間の中での恋愛。それは、恐ろしく凝縮した時間。そして決断を迫られる時間。ただ、「好き」だけでは決断出来ない時間。取り戻しのつかない時間。
終着駅とはつまり、ここで降りるか帰るしか無い選択肢。電車で寝ている事は許されない。駅員に降りろと言われてしまう。
写真はローマ駅の終着レール。日本では、昔の上野だ。僕にとっては、西武線池袋駅だ。大阪なら阪急梅田だ。でも、日本との違いは乗ったら最後、このまま外国に出てしまう事だ。
「迷い」それは、ここにおいて絶頂に達する。「終着駅」とはこの映画から出来た言葉だそうな。
○ジョヴァンニ・ドリア - モンゴメリー・クリフト:
英語教師。
イタリアのネオレアリズモから言えば、正に彼は、イタリアの豊かではない庶民だ。一方のメアリーが如何にもお金持ちの女性である点は、この映画の隅々で表現されているとおりだ。彼の武器は若さ、情熱。ただ、どこか弱い男なのだろう。強ければ、彼女を駅まで行かせない。
○ポール - リチャード・ベイマー:
メアリーの甥。
メアリーは、イタリアに親戚がいた。これもまた、メアリーを迷わせた一因だ。しかも、偶然ローマ駅で甥に会ってしまう。彼は思春期に何なんとなろうとする若者。しかも、ジョバンニとの出会いは悪印象だ。そんな事は大事ではないが、迷う彼女を引っ張る材料だ。そんな事とは知らず無邪気に駅を歩き周るポール。
○メアリーの決断
結局、メアリーはどう決断するのだろう。最高のネタバレ禁である。淀川さんなら、最高の解説をしただろう。そして映画が終わり、親とこの映画のことを語り合いたいな、と思っても、「寝ろ」と言われ、親父の心はすでに11PM辺りに飛んでいるのだ。
○自分の終着駅
大学時代、初めて東南アジアの某国に行き売春婦のに出会った。一か月その国にいて日本に帰った。帰りの飛行機、確かユナイテッドエアラインだったが、涙が止まらなくなり、窓際の席で外ばかり見て帰国の数時間を過ごした。そしてその後、何度もその国に行き、その時は空港まで送って貰った。この国にいつまでも居たいと思った。
人生のネタバレは、なるべく見ない方が良い。25年が過ぎ、その国の国民全員が、1人の日本人への勝利の歓喜の中で、僕は、おは打ち枯らし、終着駅の、あの空港を出たのだから。あの時とは違う、公務員の若者に見送られて。
合掌