migihanshin’s blog

半身不随だけれど 明るく しぶとく 生きていこう!

静かなる血闘 1949年 日本大映

静かなる血闘 1949年 日本🇯🇵大映

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「日本映画界の名匠・黒澤明監督が名作「赤ひげ」に先がける1949年、同じく医師を主人公に。難病の治療に打ち込む青年医(三船敏郎)を描いた、感動のヒューマンドラマ。

昭和19年。青年医の藤崎は野戦病院での手術中、不注意からある患者から梅毒菌が感染してしまう。終戦後、復員して父親が経営する病院に勤める藤崎だが、彼には6年もの長い年月の間、その帰還を待ち続けた恋人・美佐緒がいた。しかし、もうその頃感染の徴候に気づいていた彼は男として医師として、彼女と交渉を持つわけにいかないと決め、彼女に婚約解消を申し出る。やがて彼は自殺しようとしていたダンサーるいと知り合うが…。」Wiki

 

○所感

今回、少なくとも3回目のこの映画。「赤ひげ」もそうだが、確実に泣けるこの映画。何故泣けるのか考えながら見ていたら、また泣いてしまった。黒澤の映画の魅力は、太い筆で描いた様に骨太な事である。こうゆう筆に限って、筆の曲がり曲線は繊細で細かい。一本一本の毛が合わさって大きな物語を紡いで行く。スクリーンを越えて、見る者の心を揺さぶる数少ない監督なのだろう。

この主題、梅毒スピロヘータは、私の昔の家内が、HIVだったので人事ではない。以前は1人隠れて悩んでいたが今はその必要が無くなった。HIVに感染しながら僕と寝るような女である。思えばこの自分の陰性は大きかった。勝利の前倒しだ。

 

○監督:黒澤明、中村倍也

 

○出演

 

○藤崎恭二:三船敏郎東宝

黒澤明と三船は、それは沢山の映画を生み出して来た。その映画の設定は違えど、その根底にあるのは、ヒューマニズムであり、それを守る闘いだ。見える敵もあったが、今回は見えぬ敵だった。戦争が終わったばかりの日本で、スピロヘータと言う病気がどれほどの脅威だったか分からない。しかも今でさえ特効薬の無い病気である。

 

「梅毒の徴候や症状は進行に応じた4段階でそれぞれ大きく異なる。第2期以降の性器や全身の皮膚の特徴的な薔薇模様で知られる。3週間後、3ヵ月後、3年後等各期ごとに治療を受けないと、自然完治と誤解するような潜伏期を3度挟みながら、更に悪化した病状が発現していき、最終的に死に至ることもある。症状が出ていない期間も感染力を持ち、体内は悪化の一途を辿っており、治療法は医師から完治診断を受けるまでペニシリン系のアモキシシリンを投与を受けるのみである[2][3]。」Wiki

 

この病気の恐ろしさは、とことんまで人間を試す事にあるのではないか?それは、感染した人間もそうであるが、それを囲む社会も………

 

「予防に有効なワクチンは存在せず、ペニシリン系の抗菌薬の投与により治癒自体はするが免疫は獲得できず、梅毒トレポネーマに再感染した場合は再び罹患する[1][5]。感染すると他の性病にもかかりやすくなるため、ヒト免疫不全ウイルスと併発するケースが度々ある[6][7][8][9]。」Wiki

 

医師、藤崎恭二は、運悪くこの病気に感染してしまい、戦争前に結婚を約束していた松本美佐緒と付き合わないようにする。その訳を言わない。それは、藤崎にとって、彼の人格の棄損でもあった。

 

「主に性行為オーラルセックスキスにより、生殖器肛門から感染、皮膚粘膜の微細な傷口から侵入し、進行によって血液内に進む。」Wiki

 

○藤崎孝之輔:志村喬東宝

藤崎恭二のお父さんの医師、藤崎孝之輔は、息子の梅毒感染を知り息子を怒る。しかしそれが、医師の本分の中に起きた、無作為の事故である事を知り、顔色を変え絶句する。それは丸で、僕の元家内が、病院でaidsの陽性だと分かった時の元家内の母の私への怒り。そして直後、そのaidsは、元家内が他所の男から持ち込んだと言う事が分かった時の絶句に近かった。合間が全く一緒なのだ。

 

○松本美佐緒:三條美紀

医師藤崎の婚約者。可哀想だが、彼女はこの「静かなる決闘を知らない方が良いのだろう。

 

○峯岸るい:千石規子東宝

最近感じたのは、映画と言うのは、勿論主人公がいて、その相手がいるわけである。黒澤明の映画に限らずかもしれないが、物語全体に参加して劇中の観客の様な役割をする人が重要だと思う。この映画においては、このダンサーるいである。彼女のこの病院に於ける精神的成長が、実はこの映画を立体的に仕上げている。病院の屋上に並ぶ白いシーツ。子供の頃入院した、江古田の病院を思い出した。

 

○中田進:植村謙二郎

そして、実際に梅毒の感染を、彼等にもたらした男、中田。梅毒を嘗めている。人は人の運命を軽んじる事は出来ない。客は、梅毒を憎み、反面中田の様な男がある時、梅毒に密かに喝采を送る。全ての人間を除く生物の意志は、決して悪意に従って行われるものではない。それを理解しなくてはならない。悪意を持つ事が出来るのは人間だけだ。

 

「自然環境のいたるところに見られる常在菌の一種でもある。一部のスピロヘータヒトに対して病原性を持つものがあり、梅毒回帰熱ライム病などの病原体がこれに該当する。またシロアリや木材食性のゴキブリ消化管に生息するスピロヘータは、腸内細として宿主が摂った難分解性の食物から栄養素を摂取したり、エネルギーを産生する役割にかかわっている可能性が指摘されている。」Wiki

 

○ギブスの子供

先般も述べたが、僕も幼稚園の時事故に遭い、病院に入院してギブスを嵌めた。その時、先生から「水を飲んじゃダメだ」と言われた。それで、飲んでもいい日が来て、看護婦さんが、ガーゼに含ませて飲ませてくれた水の美味かった事、美味かった事。ちょっと、この映画の表現は弱いような気がした。まあ、良いけど。

 

○木が枯れまた咲く柵

最後に、この時代の映画に必ずと言って出てくる柵にある花木。特にこの頃の黒澤明作品に多い。

 

合掌